今日も平和なプププランド。
皆がぐうぐう昼寝する中、大急ぎで走り去る一つの影。


「あ、見つけたっ！」


息を切らしながら叫んだのは、ポピー。
このプププランドを治めるデデデ大王のお守役でもある。
その困った瞳に映るのは、昼寝をしている一匹のキャピーを鮮やかに描いていく少女。
その微笑ましい光景を再確認し、ポピーは絵描きの少女の元へ走る。


「アド！アドレーヌ！ちょっといいかな！」

「なーに？どうしたの、全力疾走しちゃって」

「そ、それが、ええっと…」

「……また旦那？」


ポピーはアドの言葉でより一層困った顔をし、少し間を置いてから苦笑いをした。
旦那ことデデデ大王は、ここ数日似合いもせず芸術に凝っているらしい。
アドが大王に絵を描くのは、既に「日常」になっていた。


「うん。大王様がまたワガママを、ね。忙しいところすまないね」

「いいよ、どうせやる事は一緒なんだし」

「大王様もアドの絵、気に入ってるんだよ」

「でしょうねぇ。で、今回は何て？」

「アドレーヌの絵じゃなきゃつまらん、アドレーヌを呼んで来い、ってわめくんだ」

「そ…そんなに？」

「秘密だけどね」


シー、と人差し指を立てるポピーにアドは笑う。
アドはわかった、今から行くよとポピーに別れを告げ、道具を持ち城へ急ぐ。
城への道中は、何故かとても丁寧に絵を描きたい気分に襲われる。
大王があそこまで自分の絵を気に入ってくれてるなんて、と意外な気持ちも込めて。


「デデの旦那ぁ、来ましたよ」

「おお！待ちくたびれたぞ！」

「で、どんな絵を描いて欲しいんですか？」

「う！？………うーむ…あー、その……」


初っ端から声を喉から絞り出すようにして困ってしまった大王。
じゃあとりあえず「すてきな絵」でいいですね、とアドは笑った。


「え、あ……うむ！そんな感じで！」

「いいですねー、なんか創作意欲が湧いてきましたよ」

「た、頼んだぞ！」

「って…デデの旦那、何処行くんですか？」

「あ、いや、市民の様子を…」

「皆お昼寝中ですって。それよりここに居て下さいよ」

「む！？」

「一人じゃ寂しいです。完成するまでここに居て下さい」


そうか！なら居てやらん事もないがな、と傍の椅子にドッシリ座り込む大王。
さらさらと筆を動かす少女を見つめるその顔は、何故か……


「…笑ってる？」

「うん、楽しそうだね大王様」

「どうしちゃったんだろう」


そんな大王を見て城の人間が不思議がる中、
結局真相は不明のままで。










「そういえば芸術品増えたよね。特にアドの絵」

「大王様に芸術の心があるとはおもえないね」

「きっと理解したフリをしているんだよ」

「あはは、大王様らしいや」





――おあとがよろしいようで。