「そら怖かったやろ」


と、冗談交じりに彼は言うのだけれど。

































しかし中川典子は、不思議と全然怖くなかった。



川原で笑い合う自分とあいつ。
アイスを食べながら語り合う自分とあいつ。
むしろ、あれは。

(夢の中のキタノ……少し寂しそうだったかな)

典子は少し目を伏せた。
なんだか妙な気分だったのだ。

目の前の青年――川田章吾はせっせと手と口のみ動かしている。
採れたての山菜を手元に置いていきながらも、典子の話は聞いてくれているようだ。
精悍な川田の鋭い瞳は、典子の丸っこくとろんとしたそれとは大きく異なる。
そもそも何故にここまで人種の違う他人に信頼を寄せているのか。
それは今見た夢に匹敵する程の、不思議な関係だった。



『中川を頼む』と叫び、自ら戦いに身を投じた七原秋也。
――七原が居なくなって何時間経つのだろうか。

去って行った七原がなんとか桐原の強襲に耐えてくれている事を祈り、
一時撤退した川田と典子は再び何処かの民家を隠れ家とし休んでいた。
疲れきってしまい仮眠という名の熟睡に身を任せていた典子だが、
妙な夢も重なり、七原の事が心配で堪らなかった。
彼は本当に大丈夫なのだろうか。不安が募る。



そんな典子を尻目に、川田は相変わらず山菜をせっせと加工していく。
川田が持って来たものなら安全なのだろうが、本当に全部食べる気なのだろうか。
――呑気に見える。
どう見てもこの辺りだけ空気が穏やかで抜けている。
プログラムと呼ばれる血も凍る恐ろしい殺人ゲームの最中だというのに。この静けさは一体?
なんとなく典子も起き上がり、山菜の葉を千切り始める。
この戦闘時とのギャップが激しい不思議な青年の手伝いをしているつもりだった。

ぷちり、ぷちりと千切っていく。

少し、沈黙があった。

不意に典子は川田を盗み見た。
「目印」のバンダナが視界に入る。
典子はその額を一度だけ七原と一緒に見たことがある。
そう、一度だけ見せてくれたバンダナの下には傷があった。
彼が神戸に居た時に巻き込まれたプログラムで負った大きな傷が。
――そういえば、この人には悲しい過去があったんだ。
典子は急にその事を思い出し、ほんの少し悲しい気持ちになった。
下を向いて、ただ山菜を千切る。



そういえば、彼は「今回」も「絶対に勝つ」つもりなのだ。
一回は優勝してしまった彼。
生き残ってしまった彼。
獣のように鋭い瞳を持つ彼。

(この人ならきっと、勝ってしまうかもしれない)

この理不尽な殺人ゲームはきっと。
悲しいけれど――慣れてしまった者勝ち、なのだろう。



でも。

このゲームは独りにならないと栄光を掴めない。
最後の独りになってようやく祝福されるのではなかったか。
なら、何故。













「川田…………さん。」
「何や」

「どうしてですか」
「何が」

「いえ、あの、ちょっと気になったんですけど……その」



そこで典子は躊躇いがちに言葉を切った。
川田は山菜を持つ手を止めて、顔を上げた。
典子もつられて顔を上げる。
一瞬、見つめ合う形になった。



「……その、」
「言うてみ」

「川田さんはこのゲームに勝たなきゃいけないんですよね」
「………そうや、勝たなあかん」
「なら、あの、どうして」






「どうして、わたしたちを助けてくれるんですか」
「……あ?」



(ご飯だって治療だって助太刀だってして貰ってる)

(たった3日間のゲームなのに何度も助けてもらってる)

(こたえてください、おしえてください川田さん)































「………助けてる、いうんかこれ」
「え?」

「助けてるフリしてるだけかもしれんぞ」
「え、なに言って」
「なんてな」
「……川田さん」
「そう腐るな。実は理由なんて無いねん」
「え!?」
「何や」





その表情には相変わらず笑みひとつなかったけれど。
中川典子はその顔が照れ臭さによって少し赤らんでいるのを見た。


「俺もよう分からんわ、そんなん」



――気の所為かもしれないが。








―――――――――――――――
バトルロワイヤルより川田×中川。カワナカでいいのかな(聞くな)
いや、もうね、川田くんの男前に惚れました。素敵すぎる。
なので最後はものすごい悲しかったです・・・この二人好きだ!
あ、そういえばコレ劇場版設定ですね。原作も好きですけど。
典子がキタノの夢見た後、もしも七原を探さずにそのまま談笑してたらっていう酷いテーマ(何)
劇場版は光子とか桐原とかがイカレまくってるのが映像で見れるから凄い。


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