後悔していって言ったら嘘になる。


























――紛れもなく、本物の魅音だと思っていた。
いや、思いたかったのかもしれないが。


「……最後にお話したかったから…」


目の前の魅音はそう言い、ほんの少し表情を曇らせた。
俺はというと、少し額の傷が痛んだが別に気にならなかった。
とにかくその時の俺の頭は、不思議とレナや皆の事など忘れていたらしい。

異変に気付いたのは、その後だ。




「………私、ね……へへ……もう……ここには、いられない……っ
今日まで……っ……がんばってきたけ、ど…はは…自分でわかるの…」

「おい…大丈夫か?具合でも……」

「もうだめ…もう、限界…ははは………」

「魅………」



――ドスッ





「け、けけけけけけけけけ…!間に合った…!くけけけ!!!」

「  あ…?」

「げげげげげげ!!!出来た……全部出来たッ!!
私が殺したいヤツは、これで全員…!げげげげげげげげげげ!!」



――ブシュ、じわじわ。


血が腹の底から吹き出る。
俺の腹に深々と何か光るものが刺さったのがかろうじて見えた。
痛い?
痛い。
いたいいたいいたいいたいいたいいたたたいいたいいいい、





「…み、お………」



ぐげぐげ、げてげてと笑う魅音の足元にくずれた俺は、かすかに名前を呼んでみた。
だが呼んだところでかすかに唇が動くだけだし、狂喜に悶える魅音には何も聞こえていない。
いやそれ以前に、腹に力が入らないのだ。


「………み、」


み、みみ、みみみ。

薄れゆく記憶の中で俺は楽しかった日々を思い出す。
あの部活は最高に楽しかった。
部長の魅音はいつだって俺達を楽しませてくれた。
毎日のように腹がよじれる程笑ったっけ。
――でも、今はもう異物をねじ込まれた俺の腹はぴくりとしか動かない。
もうじきそんな僅かな動きも止まってしまうのだろう。
そんな俺に比べて相変わらず、魅音は頭上の満月に呼応するようにぐげぐげと笑う。

くけけけけけけけぐげぐげぐげ。
誰かこの奇声を止めてくれ!
額の痛みなんか吹き飛んでしまった俺は、今ようやく両目を閉じようとしていた。














――くけけけけけけけけけけけけけけけぐげぐげ。



もう「人間」の声じゃ、ないな。


そうだ、魅音は化け物なんだ。鬼なんだ。
そう言っていたじゃないか。


鬼。
ああ、そういえば。


「今日私を見かけても…」と、あの魅音は俺に言っていたじゃないか!

ちゃんと警告してくれていたじゃないか…





悪いのは、俺だ。
俺は*されて当然だったんだ。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


でも、やっぱり怖いんだ嫌なんだ。

勝手な俺を許してくれよ。
そしたら誰か助けてくれよ。

魅音、沙都子、梨花ちゃん、



そして、















『どうしてそう思うのかな?…かな?』

『圭一君がとても仲間思いだって知ってるから…』



あの時、あの場所で、
俺の所為だと涙を零す俺の傍に居たのは。



『レナは圭一君の所為じゃないって知ってるよ』

『圭一君は悪くないって……知ってる』



――レナだった。
レナが俺をいつもに増して優しく励ましてくれた。
あの小さな手が俺の頭を撫でてくれた。



『圭一君、ひょっとしてレナも消えちゃうんじゃないかって思ってるのかな?』

『だったら安心して?』

『レナは消えたりしないよ。………絶対に』



ああ、その言葉は本当だったんだな。
現に今、きっとレナは何処かで保護されている筈だ。
レナはきっと大丈夫だ。
今も俺の事をひどく心配しているんだろうな。















次に俺は目を閉じたまま、何事にも怯まなかったレナの勇姿を思い出した。


(レナ………頼もしかったな)


あの名推理。
いつものぽーっとしたレナとは違ったあの様子。
大石さんの車で、魅音の家で。
――その姿は凛としていたっけ。



(レナ………ありがとな)


助けてくれなんて考えたけど、そんなのは到底無理な話だ。
運が良ければまだ生きていられるのかもしれない。
でも、何だかどうでもよくなってしまった。
謎と矛盾が多すぎる。



(…礼奈………レナ………)











よかったんだ。
俺はお前が安心だと分かればそれでいいんだ。

大丈夫だよ。
きっともう、全部終わった筈だ。

くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ




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魅音(詩音?)がからむと半端なく怖いです。すいません・・!
圭レナなのに何故「綿流し編」かというと、アニメ7話の頭なでなでがすごい破壊力だったので・・
綿流し編のレナは比較的まともになってるのがグッド☆
圭一とのナイスコンビで名推理を果たしてくれました。ぱちぱち。
かっこよかったなー、綿流し編のレナ・・・。


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