「 ふう」
作業を終えて、一息ついたところまで。
「今日も暑いのね……」
洗濯物を干し終わり、ふと空を見上げて独り事。
初夏がやって来たらしく、ここ数日は見事な蝉の声が私の鼓膜をふるわせた。
片付けも済んだし、誰も居ないし、何だか退屈な午後。(正確には午前だけど)
お昼まで少し時間がある。
さて。何をして時間を潰そうか。
――そんな事を考えていた時。
「お店」の方から物音が聞こえたので、私はとっさに早足。
もうすっかり茶屋の経営に慣れてきた頃だった。
さあ、今日は誰が来たのやら。
「あら………なんだ、狂…」
「なんだとはご挨拶だな」
「もう、お客様かと思っちゃった」
「客より亭主の心配は出来ねェのか?」
「はいはい、今お茶淹れるから」
(………亭主。)
やけに恥ずかしくなって、私は顔を伏せながらお茶汲みの用意をした。
亭主、だなんて自信たっぷりに言っている。
何も言わず2日も店と私を置いて出て行く様な男のくせに。
(…それも、しょっちゅう)
(なにも言わずに勝手に出て行って、勝手に帰ってくるなんて)
「猫じゃ、ないんだから」
「………あァ?」
「なんでもないでーす」
「無駄口叩くな、キリキリ働け。俺様の為にな」
「……こ、この外道…!」
――なんだか、表面上は何も変わっていないように見える。
「チンクシャ」呼ばわりされていたあの頃と。
かつての仲間達もよくこの店を訪れるし、壬生だって今は立派な都になっていると云う。
寂しくも悲しくもない。
しかも、前と違ってこの男の悪態に本気でムカつく事は無くなった。
言うならば、挨拶の様なもので。
(大人になったって事かな?それとも……)
大きな絆が出来たから、かな。
なんて。
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祝・最終巻発行!!
ようやくハッピーエンドを迎えられた二人と先生に、
お疲れ様と有難うの言葉を送りたいです。
KYO集めててよかった。先生の次回作に期待!
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